肥厚性瘢痕、ケロイド
肥厚性瘢痕の治療
肥厚性瘢痕の大部分はミミズ腫れのような形をしています。一方、深いやけどの傷跡などは地図状の膨らみになります。何れの場合も、治療の第一歩は切除です。
大きな地図状の肥厚性瘢痕の場合は切除した後に元の瘢痕よりも大きな皮膚のない部分が生じます。それをふさぐためには皮膚の移植が必要になります。
この皮膚の移植方法には、「植皮術」や「皮弁移植術」などがありますが、これらについてはまた別の機会にお話しします。
線状の肥厚性瘢痕
肥厚性瘢痕が一本のミミズ腫れだけの場合、まずそのミミズ腫れを切除します。そのあとに出来た皮膚欠損部はほぼ一直線上であるため、真皮縫合を加えながらW形成術や、Z形成術を行って、キズ跡をジグザグにします。ジグザグにすることにより瘢痕を縦方向に引っ張ろうとする力に対しても、ちょうどバネのような働きで力が分散されるため、瘢痕への刺激が少なくなります。この刺激が少ないと言うことが重要なポイントです。それによりコラーゲン増殖もへり、肥厚性瘢痕が出来にくくなるというメカニズムです。
Z形成術、W形成術
これらの方法は何れの場合も、仕上がりの傷跡はジグザグになりますが、Z形成術では傷跡の延長効果があるため、瘢痕拘縮形成術に多用されます。
ケロイドの治療
ケロイドと肥厚性瘢痕は見た目はよく似ていますが、肥厚性瘢痕がキズを押し広げるように膨らんでゆくのに対して、ケロイドはまわりの正常皮膚にしみ出すように広がってゆきます。
ほんの小さなキズでもケロイドになった場合、最初のキズの大きさからは想像もできないほど大きくなってゆくことも珍しくありません。
このようなケロイドは人種や体質あるいは場所によって出来やすさに違いがあります。胸や肩などは好発部位と言えるでしょう。またピアスの穴がケロイドになることはよく見られます。
一般的に、ケロイドの治療はかなり難しく、瘢痕拘縮と同じように単純に切除しても再発することが多いため、ステロイド注射や、x線治療などが用いられます。
ピアスケロイド
ケロイドの中でもピアスケロイドはよく目にします。これはピアスの穴の感染などのトラブルが引き金になって起こることがあります。
この場合の治療は、先ずケロイドを切除しますが、その際ケロイドをすべて切除してしまうのではなくケロイドの内側の切開線によって切除します(intrakeroidal resection)。簡単に言うとケロイドの辺縁を残します。さらに切除の際にキズをジグザグに縫えるように工夫します。
このように切除縫合することでケロイドは一部残存いたしますが、きずが治癒してからケロイド内ステロイド注射を行い経過をみてゆきます。以前にもお話ししましたが、通常の瘢痕は時間の経過とともに固さが取れて平坦化しますが、術後の状態を見ながらステロイド注射などの保存的治療を行いながらこの状態に持ち込むことが重要です。