粉瘤について(2)
前回は感染性粉瘤に切開排膿を行い、その後炎症が治まってキズがふさがるところまでを解説いたしました。
このとき、キズはふさがっても袋が残ります。つまり、排膿はあくまでも中身だけが出るのであり、そのまわりの表皮細胞の嚢は残ってしまいます。
切開排膿の直後はこの袋は小さくなっていますが、前にも書きましたとおり表皮細胞による袋であるためその内側に垢のようなものをため込んで、だんだん大きくなってゆきます。そして最終的にはまた元のような粉瘤が再生してしまいます。
つまり、切開排膿の後、適当な時期に粉瘤の摘出術を行わないと治ったことにはなりません。
手術の時期
以上のことを図にまとめてみました。 感染が起きて膨らみがピークになったところで切開排膿を行います。
排膿が進むにつれてだんだんと炎症が治まってきます。
完全に排膿が終わり、炎症もおさまり、キズがふさがりますが、この時点ではまだキズのまわりの固さが残っています。この固さが取れた頃が粉瘤摘出手術のやり頃と言うことになります。
この頃になりますと、皮膚は元通りの柔らかさに戻り、切開部分の固さも取れ、皮下にころころとした粉瘤が触れるようになります。つまり根治的な手術はこのような状態になるまで待ってから行うことが望ましいのです。
手術方法
当院ではきちっと切開して腫瘍を全摘出後、しっかり止血処置を行ったのちに、吸収糸による真皮縫合を行った後に表面縫合を行います。小さい穴からくりぬいて袋を取り出す方法もありますが、血腫等の術後合併症が増えると考え行っておりません。
まとめ
- 赤くなってない(炎症を起こしていない)粉瘤は、全摘出手術をします。
- 赤くなった粉瘤(炎症を起こした粉瘤)は、軽度の場合、抗生剤投与で数日様子を見ます。 この状態では全摘手術は行いません。
- さらに赤みが強く腫れ上がってきた場合は、切開排膿します。この場合あくまでも袋の中身(膿)を出すためのものです。ですから、最終的に袋は残ります。
- 切開排膿後、しばらくして全体が落ち着いて柔らかくなり、ころころとした粉瘤がまた触れる頃に、今度は全摘手術を行います。