粉瘤(アテローム)

粉瘤は皮膚に癒着し、その中心に小さな点状のへこみがある比較的柔らかい腫瘍で、皮膚の移動とともに動きます。皮膚のあらゆる場所に出来ますが、耳たぶにコロコロとした粉瘤を触れる方は結構多いと思います。時には粉瘤の中心の穴から悪臭のある液が漏れることもあります。また、この粉瘤に細菌感染が起こると感染性粉瘤となり赤く腫れ上がって痛みを伴います。

そもそも粉瘤は、表皮と呼ばれる皮膚の最も表面の層が、何らかの理由で真皮部分に入り込みそれが袋状になって内部に老廃物を溜め込んだ状態を指します。表皮細胞というのは常に新陳代謝を行っていますので、それが袋状になると内側に新陳代謝の結果の老廃物が溜まってしまうことによります。そしてこの新陳代謝が進むに従って腫瘍は大きさを増してゆきます。

治療方法ですが、感染性粉瘤では、軽症では抗生物質の服用だけで炎症が収まる場合がありますが、ひどくなって来るとそれだけでは治りません。この場合は局所麻酔下に腫瘍を切開して中の膿を出す必要があります。ただ一回の切開排膿だけでは治癒せず、しばらくの間は傷口からの排膿が続きますので、毎日のキズの手当が必要になります。その後、排膿・炎症ともに次第に沈静化し最終的には傷口は自然にふさがります。

ただし一旦治ったと思っても先述しました表皮の袋が残っていますので、その袋を取り除かないと完治せず、腫瘍は再発してきます。従って炎症がおさまって赤みが引き、皮膚の下に再びころころとした腫瘍が触れるようになったら摘出することをお勧めします。

炎症の起こっていない粉瘤を摘出する場合は、小さな点状のへこみの周辺の皮膚と癒着した部分を含めて、紡錘形切除をし、腫瘍の本体である袋を周辺の組織から剥離しながら取り出します。

粉瘤の詳細について

1)アテロームとはどうなっているの?

粉瘤は別名「表皮嚢腫」とも呼ばれています。表皮というのは皮膚の外側にある器官で、表皮細胞が煉瓦のように積み重なって出来ています。そこでは、盛んに新陳代謝が行われ、古くなった表皮細胞は最後には垢となって捨てられます。

 粉瘤一方、嚢腫というのは袋のことを指します。そして、先ほどのくぼみはちょうど袋の口に相当します。つまり、「表皮嚢腫」とは簡単に言えば表皮細胞で出来た袋状の腫瘍です。そして、先ほどの表皮細胞で出来ているために新陳代謝によって垢が生じます。この垢が袋の内側にたまることによって、腫瘍はだんだんと大きくなって参ります。

2)感染性粉瘤

この粉瘤に細菌感染が起こった状態が、感染性粉瘤と言われるものです。赤くはれ上がって痛みを伴います。皆さんよく「おできが出来た」と仰って来院されることが多いようです。
この、赤くなり方には程度があります。最初のうちは何となく赤みを帯び、今まで痛くもかゆくもなかった粉瘤に痛みを覚えます。
その後、炎症が進みますと真っ赤にはれ上がり強い痛みを伴うようになります。

3)感染性粉瘤の治療

症状が軽い場合は、抗生物質の内服で対処します。これだけで炎症が消退することもあります。一方、症状が重い場合や抗生物質でも炎症が進行してしまった場合は「切開排膿」と言って、腫れた部分にメスを入れて中の膿を出す必要があります。膿を出してしまうと症状は急速に落ち着きますが、数日間は膿や浸出液の排泄がありますのでガーゼ交換が必要です。

当院ではこの期間、クリニックにご来院いただけない日は、自宅での処置をお願いしています。

自宅での処置

当ててあるガーゼを剥がしたあと、シャワー等でのキズを軽く洗浄してください。洗浄後に抗生物質入りのクリームを切開部に塗り、ガーゼを当て、絆創膏で押さえます。
このような処置を繰り返していますと、1,2週間でキズがふさがり治ります。

このとき、キズはふさがっても袋が残ります。つまり、排膿はあくまでも中身だけが出るのであり、そのまわりの表皮細胞の嚢は残ってしまいます。

切開排膿の直後はこの袋は小さくなっていますが、前にも書きましたとおり表皮細胞による袋であるためその内側に垢のようなものをため込んで、だんだん大きくなってゆきます。そして最終的にはまた元のような粉瘤が再生してしまいます。

つまり、切開排膿の後、適当な時期に粉瘤の摘出術を行わないと治ったことにはなりません。

4)手術の時期

感染粉瘤以上のことを図にまとめてみました。  感染が起きて膨らみがピークになったところで切開排膿を行います。

 

 

残粉瘤排膿が進むにつれてだんだんと炎症が治まってきます。

 

 

 

再粉瘤完全に排膿が終わり、炎症もおさまり、キズがふさがりますが、この時点ではまだキズのまわりの固さが残っています。この固さが取れた頃が粉瘤摘出手術のやり頃と言うことになります。

 

この頃になりますと、皮膚は元通りの柔らかさに戻り、切開部分の固さも取れ、皮下にころころとした粉瘤が触れるようになります。つまり根治的な手術はこのような状態になるまで待ってから行うことが望ましいのです。

5)手術方法

当院ではきちっと切開して腫瘍を全摘出後、しっかり止血処置を行ったのちに、吸収糸による真皮縫合を行った後に表面縫合を行います。小さい穴からくりぬいて袋を取り出す方法もありますが、血腫等の術後合併症が増えると考え行っておりません。

6)まとめ

  1. 赤くなってない(炎症を起こしていない)粉瘤は、全摘出手術をします。
  2. 赤くなった粉瘤(炎症を起こした粉瘤)は、軽度の場合、抗生剤投与で数日様子を見ます。 この状態では全摘手術は行いません。
  3. さらに赤みが強く腫れ上がってきた場合は、切開排膿します。この場合あくまでも袋の中身(膿)を出すためのものです。ですから、最終的に袋は残ります。
  4. 切開排膿後、しばらくして全体が落ち着いて柔らかくなり、ころころとした粉瘤がまた触れる頃に、今度は全摘手術を行います。

7)症例

代表的な良性腫瘍です

粉瘤の治療法

粉瘤には2種類の治療法があります。一つは通常の粉瘤で、痛くもかゆくもありません。
もう一つは感染性粉瘤で、その名の通り細菌感染が起こっている粉瘤で、赤く腫れ痛みを伴います。

(1) 通常の粉瘤の場合:紡錘形の皮膚と一緒に、腫瘍を切除します。

インターネット広告の規制のため、写真画像についてはイラストにて表現しています。

(2) 感染性粉瘤の場合:以下の写真のように赤く腫れて痛みをともないます。

抗生物質の内服や切開をして膿を出します。

感染が治まってから改めて摘出手術をします。