手外科の紹介

手外科の紹介

手外科という名前は聞き慣れない方も多いと思いますが、その名の通り、手の外科つまり「手の疾患に対して主に外科的な方法によって治療を行う科」と考えていただいたら良いと思います。

皆様は既にどのような疾患の場合に整形外科を受診すれば良いかという事は十分ご存知かと思いますが、その中でも特に上肢に起こった病気が一般的な手外科の守備範囲と考えていただければ良いと思います。

その専門学会として「日本手外科学会」があり、整形外科医と形成外科医によって構成され、「手外科専門医」を認定しています。形成外科医と整形外科医がいるということは、同じ手外科専門医でも得意とする分野には多少の違いが有という事になります。

形成外科医である私の場合は、肩や肘の関節は専門外です。また関節鏡が必要な手関節疾患も治療が出来ません。一方、重症外傷による手の機能の再建を長年にわたり行ってまいりました関係で、手首より先の特に腱や血管そして神経の手術を専門としてまいりました。

このような経緯と、当クリニックが局所の麻酔で行える日帰り手術にのみ対応している関係から、私が治療できる疾患は手外科領域でもさらに限られてまいります。それらをお示しいたしますのでご参考になさってください。

以下の疾患については診断と治療まで行っております。

1. 腱鞘炎の診断と治療

腱鞘炎の診断には、問診・触診の他に超音波エコーによる検査も行っております。治療は腱鞘内へのステロイド注射を第一選択としておりますが、その効果は人によります。一回の注射ですっかり良くなってしまう方から、痛みやバネ現象が残ってしまう方まで様々です。また、すっかり良くなったと思われる方でも、数ヶ月後に再発する事も稀では有りません。このステロイド注射はあまり何度も出来ませんのであまり再発を繰り返すようでしたら手術が考慮されます。ただし手術をしても100%の方が良くなる訳ではなく、痛みなどの症状が残ってしまう事も有ります。

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2. 絞扼性神経障害の診断と治療

絞扼性神経障害とは神経が圧迫されて起こる症状を指します。手には主に3本の太い神経が分布しています。これらの神経が、解剖学的に圧迫を受けやすい部分で圧迫される事により、それぞれの神経が支配している領域に一致してしびれが起こります。また、これらの神経は同時に手指の運動にも関わっています。そのためしびれだけではなくて指の運動の障害も起こります。
治療はステロイド注射が第一選択となります。また、メチコバールと言う薬の内服も有効です。これらの方法でも改善が認められない場合や、症状がかなり進んでしまった場合は手術治療が適応になります。
一般に神経を扱う手術の場合、結果が出るまでにはある程度の期間を要します。同じように絞扼性神経障害の場合もしびれがとれるまでには時間がかかりますし、しびれが残る事も有ります。

3. 指の骨折・脱臼の診断と治療

当院では骨折や脱臼の治療も行っております。ただし、骨折の場合は指に限局したものを対象にしており、手首の骨折は大学病院か一般の総合病院にお願いしております。
脱臼の治療も同様に指の脱臼の治療を行っております。脱臼の場合、先ず大切な事は靱帯損傷の評価です。そのためには靱帯に負担がかかる方向に指を曲げてレントゲンを撮影するストレス撮影と言う方法が行われます。これにより靱帯損傷の程度を評価し手術が必要な場合は靱帯縫合術、あるいは靱帯再建術を行います。

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4. 指の腱損傷の診断と治療

指末節の伸筋腱損傷以外の腱損傷の治療の基本は、切れた腱を縫合する事です。ただし、これだけでは済まないのが腱損傷の難しい所です。腱を縫ったまま1ヶ月も固定をしておけば切れた部分は治ります。しかし同時に周りの組織と癒着を起こしてしまい結果として指は動かなくなってしまいます。現在ではこれらの弊害を避けるために術後の早期から、コントロールされた方法で少しずつ動かす事によって癒着を避ける方法が行われる事が多いです。

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5. デュプイトラン拘縮の診断と治療

デュプイトラン拘縮とは手の平の皮膚の一部が固く突っ張ったようになり、進行に伴ってだんだんと指が曲がり伸びなくなる病気で、中年以上の男性に多く見られます。指の曲がりが起こり始めたときに時機を逃さずに的確な治療をしないと、病状が進行し曲がりが高度になります。その段階でも治療を行わないで放置しますと関節の拘縮を起こし、たとえ手術をしても指の曲がりが残ってしまいます。
治療の基本は手術になります。手術では手の平の硬結を切除し、そのキズをジグザグに縫い直します。(Z形成術)重症例ではさらにキズに隣接する皮膚を移動する皮弁形成術を言う方法を追加する事も有ります。

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6. 母指CM関節症の診断と治療

当院では骨の変形が強い重症例に対してLRTI(靱帯再建と腱球挿入法)による治療を行っています。

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7. 腫瘍の摘出

指や手に出来る良性腫瘍として代表的な物はガングリオンでしょう。その他に腱巨細胞腫と言われる腫瘍も比較的多く見られます。このほかに神経から発生する腫瘍なども有りますが、何れ治療方法は手術によらねばなりません。手術によって摘出した後に摘出した腫瘍を病理検査に出して診断を確定します。

8. 神経損傷の治療

カッターで指を切ったり、手の平をガラスで指した後などに、指先の感覚が鈍いという症状が有れば神経の損傷を疑う必要が有ります。もし神経が切れていた場合自然治癒は望めませんので、マイクルサージャリーによって神経縫合術を行わねばなりません。

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