腱鞘炎(4)〜指の腱鞘炎の治療〜
今回は、指の腱鞘炎の治療について考えてみたいと思います。
ごく軽度のもの
ごく軽度の場合は安静や、指の軽度のストレッチで治ることもあります。
軽度のもの
この場合は、先ずNSAIDs(消炎鎮痛剤)の内服を試してみると良いでしょう。内服だけで症状がかなり良くなる方がいらっしゃいます。
中等度のもの
ステロイドの腱鞘内注射を行います。ステロイドというのは副腎皮質ホルモンであり、強力な抗炎症効果を有しています。通常はケナコルトというステロイド剤と、局所麻酔薬の混合液をA1 プーリーと腱の間に注入します。
この方法はかなり有効な方法で、この注射だけで腱鞘炎が治ってしまう方もいらっしゃいます。その一方で、一旦は良くなった腱鞘炎が時間がたつとまた悪化したという方も多く。その場合、2回目の注射をすることもよくあります。さらに繰り返す場合は、そのたびに注射を打てば良いとお考えの方もおられるかと思いますが、ステロイドの注射には腱を弱くする副作用があるためあまり大量に頻回に打つことはお薦めしません。
このケナコルトという薬は、注射後局所で徐々に溶け出して作用します。腱鞘内注射の場合およそ1ヶ月間は薬の作用が持続すると考えております。
高度のもの
腱鞘内注射は有効だったものの症状を繰り返す場合は、手術を考慮された方が良いかと考えています。手術は指の付け根の部分を斜めに1cm程切開し、A1プーリーを直視下で開きます。ここが解放されても手の機能上は問題がありません。
手術自体は複雑なものでは無く、30分以内に完了します。
一方、手術の翌日は大概の方に関節の痛みや指が曲がって延びにくいなどの症状が出ます。これらの症状は多くの場合一時的ですが、人によってはかなり長い間続くことがあります。
このような術後の症状に対しては、リハビリが必要になります。リハビリではゆっくりと指の曲げ伸ばしを行っていただき、自力で動かしづらい場合はもう一方の手を補助的に使って行っていただきます。術後はこのリハビリを無理せず気長に、そして毎日欠かすこと無く行うことが重要です。
おおよそですが、7割の方は当初術後の関節痛や伸びにくさがあったとしても1ヶ月以内には消失します。残りの大部分の方も3ヶ月程で術後の愁訴は消失しますが、稀に1年経過しても痛みが残ってしまう方もおられます。