腱鞘炎(2)〜手首の腱鞘炎〜
前回は腱鞘の構造と、腱鞘炎の起こる位置について解説しました。そこでも書きましたが簡単に言いますと、腱鞘炎は腱鞘と腱の摩擦に起因する炎症です。
そのため腱鞘炎が起こる場所は限られてきます。最も多いのがそれぞれの指の曲がる方の付け根の腱鞘炎で、そのほかは手首の関節のまわりにも起こります。
よく腕の中程の痛みを「腱鞘炎」と仰る方がいますがそこには腱鞘は無く、筋肉の痛みと言うことになります。
それでは、腱鞘炎を起こす靱帯性腱鞘はどこにあるのでしょうか。
靱帯性腱鞘のある位置=腱鞘炎の起こる場所
前回、手首の周りには腱が24本あると解説いたしました。そのうち手首の背側には合計6カ所のトンネルがあり、その中を12本の腱が通っています。これらのトンネルはどれも腱鞘炎を起こす可能性ありますが、中でも親指のの付け根のトンネルで起こる「ドケルバン腱鞘炎」が有名です。 その他には小指側の付け根で起こる「尺側手根伸筋の腱鞘炎」も散見されます。
一方、手首の屈側ではこのような靱帯性腱鞘に起因する腱鞘炎は多くありません。その代わりそれぞれの指の付け根の部分に腱鞘炎が起こります。よく言われる「ばね指」はこのような腱鞘炎を指します。
やや専門的になりますが、手の腱鞘炎の名前と場所を図示いたします。
- ドケルバン腱鞘炎
- 軋音性腱周囲炎
- 総指伸筋腱鞘炎
- 尺側手根伸筋腱鞘炎
- 指の腱鞘炎
- 尺側手根屈筋腱炎
- 橈側手根屈筋腱炎
- 拇指の腱鞘炎
手首の腱鞘炎の症状
手首の腱鞘炎の一般的な症状は、圧痛と症状が重くなるとはれもみられます。この中で有名なものとしてドケルバン腱鞘炎があります。また、尺側手根伸筋腱鞘炎もたまに見られます。
ドケルバン腱鞘炎
かなりポピュラーな腱鞘炎の一つです。手関節の親指の付け根側に症状が起こり、親指を握り込んで、手首を小指側に傾けると痛みが起こります。授乳中の女性に見られることも多く、ホルモン作用も関係していると考えられています。
尺側手根伸筋腱鞘炎
手首の小指側の痛みの原因の一つです。小指側の痛みの原因としては他にTFCC損傷というものもあり、鑑別が必要です。
次回は指の腱鞘炎について解説いたします。