腱鞘炎(1)〜腱鞘炎の定義〜
腱鞘炎は狭窄性腱鞘炎とも呼ばれますが、いったい何がどのように狭窄しているのでしょうか。その前に、そもそも「腱鞘」とは何でしょうか。
筋肉と腱の構造
一般に筋肉は関節を介在して骨と骨に付着し、収縮により関節が動きます。胸の筋肉や、上腕の筋肉を観察するとよくわかります。
一方、前腕の筋肉を見ますと上腕のものとはやや異なり、それぞれの筋肉の端が長い「腱」になっています。この腱が手首の骨や指の骨に付着し、各々が協調した動きをすることによって緻密な手の運動が可能になっています。
前腕の筋・腱
さて、この前腕の腱ですが、手首のところに集合していますがいったい何本くらいあるでしょうか? 数えてみますと、手首を曲げ伸ばしする腱が6本、親指を曲げる腱が1本、人差し指から小指までを曲げる腱がそれぞれ2本づつ、指を伸ばす腱が9本、以上合計24本もの腱が手首のところに集中していることになります。
そしてそれらの腱の通り道として、手首のところには腱を通す靱帯で出来たの頑丈なトンネルがあります。さらに指にもそれぞれの骨の曲がる側に、いくつかの靱帯性のトンネルがあります。これらの靱帯で出来たトンネル構造は「靱帯性腱鞘」と呼ばれます。
もしのこれらのトンネルが無かったとするとどうなるでしょうか。手首や指が曲がる前に腱は「弓弦現象」を起こして浮き上がってしまします。ですから腱の通っている靱帯はこのような腱の浮き上がり防止するためのメカニズムであると考えていただければ良いと思います。
腱鞘炎とは
これら強固な靱帯性腱鞘をこれまた強固な腱が滑り運動をしますと、当然強い摩擦が起きてしまいます。そのため靱帯性腱鞘と腱の間には滑膜と呼ばれる、簡単にい言えばヌルヌルした膜が介在することによって、靱帯性腱鞘と腱の間に生じる摩擦を軽減しています。
腱鞘炎とはこのような靱帯性腱鞘によって腱が包まれた部分に起こる炎症です。従って靱帯性腱鞘に包まれていない部分には腱鞘炎は起こりません。その場合は「腱炎」とよばれます。
つまり、腱鞘炎にしろ腱炎にしろ痛みの中心はこれらの場所に限られるということになります。