デュプイトラン拘縮(2)
前回はデュプイトラン拘縮の病態についてご説明しました。そして、適当な時期に手術をしないと、関節自体が固まってしまい、その段階で手術をしても指が曲がったままになってしまうことがあることもご説明致しました。ですから、皮膚の引きつれがあって指が伸びにくいと感じた場合は、早々に手術をなさった方が良いと思います。
以下当院で行っている手術についてお話しいたします。
ご来院から手術の準備まで
手術開始時刻の約10~15分前にご来院いただきます。これは他の手術の場合も共通です。手術に先立って手術着に着替えていただく必要はありませんが、上半身のみT-シャツ等の下着の状態で、手術用ベッドに横になり、腕を手術台に伸ばしていただきます。
麻酔
次に、手関節部で神経ブロック麻酔を行います。この麻酔は正中神経と尺骨神経の周りに局所麻酔剤を浸潤させることにより、そこから先の神経の働きを一時的に麻痺させるものです。ここで使われる麻酔薬は手術終了後もかなり長い間(当日の夜中まで)効果が持続しますので、術後の疼痛コントロールにはうってつけです。反面、効き始めるまでに時間がかかるという欠点があります。
手術の準備
神経ブロック注射の後に、消毒及びドレーピング等手術の準備を行います。一般に手の外科の手術はたとえ手術部位が一本の指であっても少なくとも肘から下全ての消毒を行い、滅菌布で覆い体から隔離します。時々手術を見たいとおっしゃる方がいますが、それはできません。
追加麻酔
手術の準備が整いましたら、麻酔の効き具合を調べます。そしてさらに浸潤麻酔を追加します。この追加の麻酔は先の神経ブロックが有効であれば痛みはありません。浸潤麻酔にはごく少量の血管収縮薬が入っていますので、手術時の無駄な出血を抑えることができます。
もし、この血管収縮薬を併用しない場合、腕の付け根に血圧計のようなものを巻いて加圧することによって手術する場所の血流を遮断し「無血野」で手術を行う必要が有ります。なぜかと言いますと、手は極めて精密な構造をしているため、正確な手術を行うための「血止め」が必須だからです。
しかしこの方法は、腕全体、あるいは全身麻酔をかけない限り長時間の手術には向きません。当院でも腱鞘炎の手術や手根管症候群の手術のような短時間の手術以外には用いておりません。
一方、血管収縮薬を含んだ麻酔薬による局所浸潤法(ワイド・アウェイク・サージャリー)は、長時間にわたりかなりの出血コントロールができるため、最近では多種の手術に応用されています。
手術前の準備についてご説明しましたが、次回は手術自体の方法について書いてみたいと思います。