皮膚のできもの、「ホクロかな?」

一見ホクロに似た皮膚腫瘍は良性から悪性のものまで幾種類かあります。その中でも一般的なものを、良性のものから悪性のものまで並べてみますと次のようになります。

ホクロ(母斑細胞性母斑)」「脂漏性角化症」「基底細胞上皮腫(基底細胞癌)」「悪性黒色腫」。このうち最初の二つは良性で、後の二つが悪性です。二つの悪性腫瘍のうち、基底細胞上皮腫の悪性度はあまり高くありません。一方、悪性黒色腫は悪性度が高く要注意です。

ホクロ(母斑細胞性母斑)

正確には母斑細胞性母斑と言います。黒っぽい色をしたホクロに似た腫瘍には、やや青みがかった青色母斑、見かけは似ていても全く違うものである脂漏性角化症、さらに悪性のものでは基底細胞上皮腫や悪性黒色腫などもあり、見分けることは簡単ではありませんので、黒っぽい腫瘍を見かけたらまず医者に見てもらった方が安全と言えるでしょう。

実際の診療では、黒っぽい腫瘍を見た場合、その分布状態と見た目で診断の当たりを付けます。その次に、ダーモスコピーと呼ばれるルーペの一種を用い腫瘍を詳細に観察します。このダーモスコピーを用いることで、目で見る場合よりも正確に診断することが出来ます。たとえば足の裏のホクロを心配されて来院される方が多くいらっしゃいますが、この場合もダーモスコピーでかなりの精度で診断が可能です。しかし最終的には紡錘形切除をし、病理検査を行った方が診断が確実で、かつ治療になるため、気になる場合は切除をお勧めいたします。

よく小さいホクロを「レーザーで焼いて取る」と言われますが、レーザーで焼いてしまうと、当然ですが診断が出来ません。もしレーザーで焼いたものが悪性だった場合、レーザーだけの治療ではいずれ再発します。そのためレーザー治療はホクロを注意深く観察するとともに、ダーモスコピーで精査し、さらにはそのホクロの歴史まで確認して、明らかに良性の普通のホクロだとわかってからすべきでしょう。

次に、ホクロの深さというものについて考えてみます。一般的に「ホクロ」と呼ばれるものは正確には母斑細胞性母斑とよばれ、深さの差はあるものの真皮の層にも存在しています。ですからそのホクロを取る場合は皮膚の深いところまでしっかり取る必要があります。従いまして、レーザーでホクロの除去を行った場合、そのホクロの大きさに応じた穴があくことのになり、その穴がキズの治癒力によってだんだんと塞がってくるのを待つことになります。

もし穴の直径が小さい場合、たとえば2mm程度だったとすると、キズの治癒力によって治癒した後には約1mm程度のクレーターが残ることになります。1mm程度のクレーターならば、それほど目立つことはありません。でも、もしホクロの大きさが5mm程度だとすると、治った後のクレーターの大きさは3mm程になり、場所によってはかなり目立ってしまいます。「レーザーで取る」というと、言葉の響きとしては万能のように聞こえますが、実際は以上の点に注意しないといけません。

一方、紡錘形切除を行った場合、キズはもとのホクロの直径よりも長くなりますが最終的には一本の線状瘢痕になり、大きなクレーターが残るよりも目立たなくなることが多いようです。

このように、レーザーであれ切除であれ、手術操作によって皮膚のできものを取る場合、多かれ少なかれキズが残ることを避けることは出来ません。重要なのは目立たないキズ跡にするためにどの方法を選ぶかということです。
当院では長年の臨床経験をもとにアドバイスさせていただいております。

脂漏性角化症

母斑細胞性母斑に良く似たできものの一つが、この脂漏性角化症です。この腫瘍は加齢に伴って増加し、顔などの日光に当たる部分に多く見られます。その臨床症状は多彩で、シミのようなものや、ホクロに似た盛り上がりを見せるもの、さらには皮膚のタックのように見えるものまで様々です。

このできものは、母斑細胞性母斑とは異なり、表皮と呼ばれる皮膚の表面から発生しています。そのため、皮膚の浅い部分を削ぎ取るようにすることで摘出することが出来ます。当院ではこの目的のために高周波ラジオ波メス装置・サージトロンのFULGURATEモードで治療を行っています。
一方、首などに多発したタック状の脂漏性角化症は、はさみで切除を行うことがあります。

基底細胞癌

基底細胞上皮腫とも言い、皮膚がんの一つです。この疾患は局所の再発を注意する必要がありますが、遠くの場所に転移することは稀だと言われております。そのため腫瘍の大きさと部位に応じて、「腫瘍取り扱い規約」という手術の規則に準じた方法で摘出することによって十分完治可能と言われています。その意味で扁平上皮癌といわれるものや、悪性黒色腫に比べて悪性度は低いと言われております。

治療はまず腫瘍の組織を取って調べることから始めます。このとき腫瘍が小さければ全てを、大きい場合はその一部を取って調べる事になりますが、次に述べる悪性黒色腫の疑いもある場合は全部を取って調べることが原則になります。切除は腫瘍の大きさと状況に合わせて、腫瘍の周りから一定の距離を離して行います。この切除法が適切であれば基底細胞上皮腫の場合は根治を期待することが出来ます。

一方、この腫瘍は80%が顔面に発生すると言われており、腫瘍の場所によっては切除後に顔面の変形を来す可能性があります。そのため、腫瘍を取った後の欠損部を再建するためには皮弁移植植皮術のような形成外科的手技が必須になって参ります。

悪性黒色腫

ホクロに似た腫瘍で最も気をつけねばならないのがこの悪性黒色腫です。この腫瘍は放っておくと死に至る悪性腫瘍であり、早期に適切な治療を行うことが何よりも大切になって参ります。その治療では腫瘍の拡大切除ととともに、センチネルリンパ節生検を行い、場合によってはリンパ廓清を施行します。いずれにしましてもクリニックで治療するレベルを越えていますので、疑いが強い場合は総合病院の皮膚科を御紹介いたします。

この悪性黒色腫も一見ホクロと見分けがつかないことがあります。その場合、先述しましたダーモスコピーによって判定を行いますが、これだけで確定できない場合もあり、生検によらねばならないことも珍しくありません。その場合も原則としては腫瘍の一部ではなく全部を切除して病理検査に出さねばならず。また、そこで悪性が判定された場合出来るだけ早い段階で拡大切除を行うことが望ましいと言われております。

ホクロが悪いものではないかと心配してこられる方の多くはこの腫瘍を念頭に置かれていらっしゃると思います。もし少しでも気になるようでしたら受診をお勧めします。