手指の変形性関節症の治療

へバーデン結節

変形性関節症という疾患があります。これは加齢により関節の軟骨がすり減る事が原因となります。軟骨がすり減りますと当然ですが指の曲げ伸ばしのときに痛みを生じます。さらに症状が進行しますと、軟骨部分だけではなく軟骨の下の骨にまで影響が及び、関節は高度に変形します。この変形は皮膚の上からも触る事が可能であり、この結節状に盛り上がった状態をへバーデン結節と言います。

変形性関節症は爪に最も近い関節に起こる事が多く、両手の親指から小指まで全ての指に変形が起こる事があります。症状で一番困る事はなんと言っても痛みでしょう。軟骨のすり減った関節を酷使すると炎症が起こり赤く腫れる事があります。このような場合は消炎鎮痛剤を使い安静を保つ事が必要になります。また、このような急性の痛みだけではなく、慢性的な痛みが起こる事もこの疾患の特徴です。このような場合も痛みをコントロールする薬を服用しながら様子を見てゆくしかありません。この疾患の場合、最終的には変形は強まりますが、痛みはおさまると言われております。

この変形は加齢による不可逆的なものであるため、現時点では根本的な治療法はありません。もし変形の程度がひどい場合手術によって変形した関節を固定する方法があります。関節を固定しますと指の一番先の関節は動かなくなりますが、変形と痛みは無くなります。

母指CM関節症

指の第一関節と並んで変形性関節症の起こりやすい場所が親指の付け根の手の関節に近い部分です。ここはCM関節(手根中手関節)と呼ばれており、手の関節を指先から順番に数えてみますと3個目に位置します。この関節は馬の鞍を背中どうし重ねた様になっておりそのため可動範囲が広く力もかかりやすいため、軟骨がすり減りやすく、結果として関節の変形が起こりやすくなってまいります。さらに、親指の付け根を支えている靱帯が緩い場合も関節軟骨に負担がかかり、結果として関節症を起こす事もあります。

症状は指の付け根の痛みです。特に親指を使ったときに強く起こりますが、症状が強くなりますとほんの些細な動きでも痛んだり、何もしなくても痛んだりする事があります。このような場合、親指を支え、関節を構成している大菱形骨という骨が高度に変形し、関節内遊離体や骨棘形成が認められます。治療はまず関節の安静をはかり消炎鎮痛剤を服用します。それによっても症状が治まらない高度な場合は手術を行います。

手術には色々な方法がありますが、高度な場合は関節固定術か関節形成術がおこなわれます。関節固定術は変形した関節を削って固定し、CM関節を無くして、骨にしてしまう手術です。一方の関節形成術は変形した大菱形骨の一部あるいは全部を除去し、腱の移植によって母指の中手骨を安定化し同時に大菱形骨腔を腱で埋める方法です。関節固定術を行った場合、CM関節は固定されるため母指の関節可動域は減少します。関節形成術の場合は固定術に比べ可動域の低下は少ないという特徴があります。