傷跡(きずあと)の話(4)

例として、ホクロの取り方を考えてみます。
よく「レーザーで取ってください」と言われますが、おそらく、レーザーという聞こえのよい言葉から、まるで消しゴムで消したかのように跡形もなくなってしまうことを期待されているのではないでしょうか。

ホクロにレーザーを当てるとどうなる?

ホクロは正確には母斑細胞性母斑と言い、真皮の深い部分まで母斑細胞が存在します。母斑細胞は黒いためレーザー光を吸収し蒸発します。つまり、レーザーによるホクロ除去とは、ホクロを焼き尽くすこと他なりません。真皮の深い部分まで焼きますので、レーザーで除去した直後は皮膚に穴が開きます。

この穴はキズの治る力により、即ち瘢痕が形成されてふさがっていきます。つまり、穴の部分に丸い瘢痕が生じ、その瘢痕の収縮即ち「瘢痕拘縮」によって穴が縮小して治ります。その結果、皮膚にはちょうど月面に見えるクレーターのような跡が残ってしまいます。

もしもホクロの大きさが2mm程度の小さいものならば、傷跡のクレーターは1mm程になり、それほど目立ちません。ところが5mm程度のホクロをレーザーで治療した場合、どうしても3mm程度のクレーターが残ってしまいます。決して跡形もなく取れるわけではありません。
レーザーが悪いというわけではないのです。おそらく皆さんのイメージとは違うと思いますので、解説してみましたが、小さいホクロの場合はは適切な治療になると思います。

大きいホクロの場合はどのように取ったらいいか?

大きいホクロの場合は切り取って、縫い寄せるしかありません。spindle excision & suturingと言って、ホクロをまわりの皮膚を最小限に含めながら紡錘形に切除し、できた傷跡を縫合します。それによってできる瘢痕をいかに目立たなくするかと言うことが重要になってきます。
そのためには今まで解説してきたように、キズをシワの方向に一致させて、丁寧な真皮縫合を行うことが重要です。

特殊な場所のホクロ

今回は顔面に限った話をしていますが、特殊な場所とは、鼻・まぶた・唇などのように皮膚にゆとりの無い場所を意味します。反対にホッペタは上記の場所に比べると皮膚のゆとりが多いことがわかっていただけると思います。額なども広いのですがホッペタに比べて皮膚の可動性は少ないようです。
このような特殊部位のホクロで、比較的大きいものは単純なspindle excision & suturingだけでは変形が起こってしまうことが想像されることと思います。その場合、「皮弁形成術」という方法を用いて変形を最小限にするような事を行う場合もあります。
皮弁形成術ついてはまたの機会にお話しいたします。


今日の一枚


15.4.2b