手術手技:つなぐ

「つなぐ」という操作は「切る」操作と同様手術においては無くてはならない操作の一つです。皮膚の場合は「縫う」操作の方に書いておきましたのでこちらではもう少し特殊な場合について見てゆきたいと思います。

 

先ず、骨折治療での骨接合はつなぐ操作の一つと考えられます。一般に骨折の治療では、骨折部分を整復した後にギプス固定をする方法(非観血的整復固定術)と、骨折部の皮膚を切開して、骨折部分を直視下に見ながら整復して固定する方法(観血的整復固定術)があります。手の外科領域では、主に直径1−2mm前後ステンレス製のワイヤーや、チタン製のネジとプレートなどの材料を用いて整復された骨折の固定を行っています。

 

次に、切れてしまった腱をつなぐ場合が考えられます。腱をつなぐ事を腱縫合といい、手の場合屈筋腱縫合と伸筋腱縫合があります。いずれの場合もつなぐ材料は合成の非吸収性糸を使い、特殊な縫い方によって行います。腱の治療においては技術的な複雑さもさることながら、術後の後療法も重要になってまいります。

さらに、特殊な縫合と言えば、靱帯縫合が挙げられます。一般に、骨と骨は靱帯によってつながれ軟骨を介して関節を形成しています。従って靱帯は扉における蝶番のような重要な役割をしています。捻挫、脱臼というのはこの靱帯に損傷が加わった状態を指し、損傷の直後に関節面が完全にずれているものを脱臼、関節面にずれがないものを捻挫といいます。靭帯損傷は一般にギプス固定など保存的療法によって直すことが多いようですが、手術が必要な場合も少なくありません。この靱帯の縫合の時によく使われるのが骨アンカーと呼ばれるチタン製の固定器具です。特に側副靱帯損傷の治療において多用されます。一方、縫合できないほど損傷が著しい靭帯損傷では腱移植などによる靱帯再建術を行います。

最後に「つなぐ」といえば、切れてしまった神経や血管をつなぐことがあげられます。これらの神経縫合血管縫合は形成外科・手外科分野では手術用顕微鏡を用いて行われるためマイクロサージャリーの項目で説明いたします。