手術手技:切る(切開)

「切る」すなわち「切開」操作は、手術の最初に行われる操作です。ここでは、いかにきれいに周辺の組織を痛めずに切るかが重要になります。何故ならば、周辺の組織の痛みが少なければ少ないほどキズは速やかに治り、速やかに治ったキズはそうでないものに比べて術後の「瘢痕」すなわち傷跡がきれいになるからです。多少乱暴なたとえですが、切れる包丁で切らないと刺身が美味しくならないのと似ているかもしれません。

きれいに切るために、現在ではどこの施設でもディスポーザブルのメスが使われています。また、当院ではディスポーザブルメスの他に高周波ラジオ波メス装置・サージトロンを導入しており、これを用いて切開を行う事もあります。この装置は一般の電気メスよりも高い周波数が使われており、周辺の組織を痛めることのない精密な切開が可能になります。

一方、「切開」の方法としては、直線切開ジグザグ切開紡錘形切除Z形成術W形成術などがあります。

直線切開

文字どおりまっすぐ切ることを言います。キズ跡の目立ちにくさや、引きつれのことを考慮した場合、出来るだけ皮膚のシワと平行に切ることがよいと言われています。

ジグザグ切開

手の平や、指腹の切開で多用される方法です。キズは治った跡でも、「瘢痕拘縮」と呼ばれる現象によって収縮しようとする傾向があります。手の平や指のキズでこの現象が起こると指が伸びにくくなってしまうことがあります。それを避けるためにあえてジグザグに切ります。

紡錘形切除

ほくろを除去したり、粉瘤を摘出したりするときに使う切開方法で、葉っぱの形にくりぬいてから縫合します。もし丸くくりぬいて縫い寄せた場合キズの両端が余ってしまいますので、それを避けるために葉っぱ型の切開で切り取ります。

Z形成術

形成外科ではなくてはならない手法で、線状のキズによる引きつれ(瘢痕拘縮)が生じた場合に用います。この方法はキズの両脇に二カ所の切り込みを入れて作成された三角形の皮膚を各々入れ替えることにより、ちょうどアルファベットのZの様なキズになって延長効果が出ることからZ形成術と呼ばれます。

W形成術

顔の線状の傷跡の修正で使われる方法です。線状のキズの両脇に小さな連続するジグザグの切開を行ってキズを切り取り、残ったジグザグのキズを丁寧に縫い合わせます。これによってまっすぐなキズは小さなジグザグのキズに変化します。線状のキズに比べてジグザグのキズは目立ちにくいためこのような手術を行います。「傷跡をきれいにする手術」というのは、W形成術かZ形成術を使ってキズを出来るだけ目立たなくすることを指します。決してキズがなくなる訳ではありません。